ニューヨークの美術館で出会った絵画たち
ニューヨークには数々の大美術館がある。代表的なのが、メトロポリタン美術館、グッゲンハイム美術館、ホイットニー美術館、ニューヨーク現代美術館(MOMA)あたりか。
そして、小さなギャラリーを加えると、美術館好きにはたまらない場所なのだ。
芸術に枠を広げると、リンカーンセンターでは、シーズン中は、オペラやバレイ、クラシックコンサートなど、頻繁にプログラムがあるのです。半年ほど滞在していた時には、語学学校に行ってるだけでも学生割引がきき、一般でも、安売りチケットを買うことができる。それも、悪くない席。初めは、ニューヨークに興味がないまま、旅に出た。しかし、芸術目的ならここまで身近に経験できる場所は多くはないだろう。そして、ジャズやミュージカルも加えると、たまらない。
夏は、リンカーンセンターの上演が静かになる。一方で、セントラルパークや、ブライアンパークなどの大公園でのフリーコンサートやオペラが上演される。オペラやバレイを見たいのであれば秋がおすすめ。芸術に浸りたいなら、ニューヨークは絶対おすすめです。
メトロポリタン美術館 The Metropolitan Museum of Art https://www.metmuseum.org
メトロポリタン美術館、以前は入館料が任意だった=0~∞
要は、自分で金額が決められる=0でもOK
10年程前になりますがニューヨークに半年ほど滞在していました。その頃は、旅行者でも在住者でも、一律に、入館料金が任意だったので、ふらっと、1ドル程度の寄付で入館したりしていました。
近所に部屋を借りていたこともあり、ネットの調子が悪いといっては、美術館で、例えばエジプト展示室でPCを広げていました。贅沢ですよね。
それができたのは、法律があったからだそうです。
市所有の土地を無償で貸す代わりに、入館料を無料にするというものです。太っ腹です。
如何に芸術への理解が深いかということですね。イタリア人芸術家と滞在中に話しをしました。
芸時術のメッカは、イタリアなのに、なぜここに来たのかと聞くと、イタリアは新しい芸術への理解がないとのことでした。ニューヨークに若い芸術家が集まる理由ここにあり!!
とはいっても、当然ながら赤字が続き、2018年に、州在住者以外の一部を除いて、
大人の入館料金が、25ドルの義務に変わりました。
住んでる人以外は、ちゃんとはろてや、ということになりました。残念ですが。
大美術館の特別展はおすすめ。
旅行で行くと、大美術館観光になってしまう私。意識朦朧となりながら、有名絵画を”観る”ではなく”見る”を制覇することをやってしまいます。ルーブル美術館も同じ。
しかし、半年の時間があれば、そんなことする必要なし、それに、当時拝観料金はほぼただ。そうなると、意外に行かない。ネットを使う以外には。
通りを歩いていると、メトロポリタン美術館の特別展の案内の幟がはためいている。それにつられていったのが、サージェント展とゴッホアイリス展。キュレーターのセンスが半端ないこの美術館。のちに挙げるノイエギャラリーでも同じことを感じました。同じ絵画でも、見せ方で見る側の心を動かすのです。特別展に行き始めたのが、帰国間近だったので、2展しか行けなかった。😭
John Singer Sargent(ジョンシンガー・サージェント)
展示室を入ってすぐに、目に飛び込んできたのが左の作品「カーネーション・リーリーローズ」でした。
一瞬で、心奪われました。愛らしい少女二人のまるで天使のような清純さが伝わってきました。
私のつたない表現力の中ではっきり言葉にできるのは、彼は、それぞれの色が持つ力を存分に、表現しているということでした。オレンジは、明るく、温かく。白は、清純、清潔、純真。
そしてこの「マダムXの肖像」では、黒の高貴、気品が伝わってきました。この絵自体は少々妖艶な感じもしますが。
この左の作品は、ジャポニズムの影響を受けているといわれています。このヤマユリと、夏行灯がそれを示すと。
「マダムXの肖像」ですがこの作品が出展された時、パリの画壇では、官能的で品がないと酷評され、スキャンダルになったとか。というのも、実在の人妻を描いたとされたからのようですが、このことが原因で、サージェントは、パリを出て、ロンドンに移り住んだようです。
確かに、正面を向いてまっすぐ立っているのとは異なり、少し、上体が横を向きながらも、右手をねじってテーブルをつかんでいるところなどは、画家との、何やらただならぬ関係を想像させなくもないというところでしょうか。
そして、この絵画は、エンヤの「on the way may home 」のPVにもモチーフとして使われています。2:30頃から。
ゴッホ、アイリス展
Vincent Willem van Gogh
ニューヨークでは、ゴッホでは通じません。日本語的に言うと、”ヴァンゴー”というと、”ああ”という反応がもらえました。
ゴッホといえば、「ひまわり」や「糸杉」「星月夜」など、有名な作品は多数あります。そして、ゴッホ展は、集客力もあることから、日本でも、頻繁にどこかしらで展覧会が開催され、わざわざ海外に行かなくても、日本にやってきてくれます。
そして、メトロポリタン美術館でも開催されました。「星月夜」は現代美術館(MOMA)所蔵であり、金曜日夕方からの無料拝観時間になると、この作品の前には黒山の人だかり。
しかし、特別展とは、アイリス展。人はまばら。サージェント展とは異なり、隅の方の一角で、ゴッホが描いたアイリスが数点展示しているだけでした。
しかし、そこにいるだけで、とても幸せな気持ちに包まれました。「ひまわり」のような強いエネルギーではなく優しく美しい品のあるアイリス。「星月夜」と同じく南フランスの療養所にいたときに描いたものとか。うねった空を描いた「星月夜」優しく美しい「アイリスと花瓶」。この一年後、ゴッホは事故で亡くなっています。精神的に不安定だっと言われていますが、この「アイリスと花瓶」からは、落ち着いた穏やかなエネルギーだけを受け取りました。あまりにも、苦しく強いエネルギーを発しているようで、返って何も受け取ることがなかったゴッホ作品でしたが、この特別展で見方が変わりました。
因みに、このアイリスも展示されていましたが、何とひまわりを抜いて落札価格が50億円だったとか。
ノイエギャラリー Neue Galerie https://www.neuegalerie.org
メトロポリタン美術館から、歩いて5分もないかな?すぐ近くにある、小さなギャラリー開館11:00。ニューヨーカーに勧められ行きました。
その時のアドバイスが、30分前に行くようにとのこと。正解でした。
開館しても、中が狭いため、入場制限があります。さらなるアドバイスが、ニューヨーカー
は、朝は苦手とあり、それ以上早くいく必要はないと。パーフェクトな情報でした。
30分前に着くと、一番でした。そして、間もなく長い列が後ろに続きました。優越感!!
クリムト展 Gustav Klimt
ノイエギャラリーで見たのは、クリムト展。もう日本でも有名な画家ですね。
はじめ、”こんな、ちっちゃいとこで、メトロポリタンやMOMAとおんなじ金額とは、納得いかんなあ”と開館を待ちながら思ったものです。ところがですよ、入ってみると、寧ろこの狭さを生かして展示したかのように、クリムトの作品のエネルギー密度が高まっているのではないですか。
独創性、迫力、美しさ、そして、官能性。サージェントの「マダムX」とは比べ物にならないくらいの直接的な官能性がそこに煮詰まっておりました。その中で、子供へ慈しみが表現されている横で骸骨です。生と死。様々な感情が衝撃がこの狭い空間で襲ってきたのです。狭いからこそよりそれが強く感じられました。
クリムトは、父親が金細工師であったことだけではなく、ジャポニズムが席巻していた当時のこと、琳派の影響を受けているのではないかと言われているようです。
印象派絵画には、日本絵画の影響を受けているものが多くあり、そこに、日本芸術の独創性や影響力の高さを知ることができ、誇らしく思います。私の作品ではないのですが。
琳派である尾形光琳の「風神雷神」。確かに、影響を受けてるといわれても不思議ではないですね。ジャポニズムがヨーロッパで席巻されていた時は、日本では、包み紙になっていた浮世絵までが高い値段で売れたようです。
クリムトの作品は、どこで見ても、一つ一つの作品に、圧倒的存在感があります。
もう一度、あの時見た、作品を、まとめて、できれば大阪で見てみたい。
東京では、展覧会があったようですが、関西には来なかったので。とても残念でした。
実は、クリムトが気に入ってしまって、「死と生」生の方をデコパネルにしたものを玄関に飾っています。いつも鮮やかでで優しいエネルギーがそこにあるよう感じています。
絵画クリムトデコパネルコレクション「風神雷神」尾形光琳(琳派)
まとめ
賛否のわかれるニューヨーク。ニューヨークに半年もいてなにするん?何がええん?と鼻で笑われること少なくなし。行くまではおしゃれな人が行くところと思って、あまり興味がなかったのですが実は、様々なエネルギーを感じることのできるニューヨーク。ニューヨーク旅 +α例えそのエネルギーと波長が合わずとも、このアートに焦点を合わせるだけで行く価値のある場所でした。そして、行くなら秋がおすすめ。そして、美術館、ギャラリー、リンカーンセンターへGO!!