成果はフロー状態から
フロー状態、スポーツでは、ゾーンと言います。
イメージや経験的には、ゾーンの頻度は低く、衝撃的な経験になる一方で、フロー状態は、ノーベル賞級の発見だけではなく、日常の開発業務でも、経験し、頻度は低くはないのではないでしょうか。
スポーツでは、ただのクラブ活動レベルで、プロの選手になれば、日常なのかもしれませんが。
日本の復活はひらめきが鍵では、まさに、周りの研究者、技術者たちはフロー状態で開発を進めていたことを書いています。
フロー状態を経験する研究者技術者は、開発に成功するブレークスルーに至ります。
一方で、多数の人たちは、これを経験することなく、時間やマニュアルにより業務を進めています。
フロー状態を経験する人としない人の違い
結局、仕事が面白いと思っているかどうかにありました。没頭できる状態に至る動機が必要なのです。戦後復興時には、面白いと思う以外に、国の復興や生活の向上、会社の成功が、やりがいとなり、フローを導く原動力になっていました。しかし、一旦、経済的成功を収めた国において、それは、動機として機能しなくなり、個人の好奇心や、向上心のみに委ねられることになりました。多くは、それがありませんでした。社会人に至るまでの過程で、好奇心や向上心を軽視し、競争を焦点に充てた教育に、疑問を持つことなく適応してきたのですから仕方がありません。競争で勝利が、何かに没頭できるほどの動機になればこの状態に至るかもしれませんが、少なくとも、社会人ではいませんでした。
この、与えられたモチベーションを失った状態が、平和ボケだとか大企業病と言われた衰退の主要因ではないかと感じています。
ミハイルチクセントミハイのフロー状態の定義
フロー状態と名付け研究された心理学者がいました。
ミハイル・チクセントミハイ
フロー状態とは
ある事柄への深い没頭を特徴としそれが成功に導かれている感覚
具体的に
★専念と集中、注意力の限定された分野への高度な集中。
★自己認識感覚の低下ー我を忘れている
★活動と意識の融合ー意志とは離れ、意識と活動が一体化している
★状況や活動を自分で制御している感覚-やらされているのではなく自主的活動
★時間感覚のゆがみー時間が短く感じる
★活動に本質的な価値がある、だから活動が苦にならないー好きなこと、やりがいを感じる
こと
どうすれば、フローに入れるのか? by 心理学作家のケンドラチェリー
1.直接的で即座のフィードバック
2.成功する可能性があると信じる(明確な目的, 予想と法則が認識できる)
3.経験に夢中になり、他のニーズが無視できるようになる
4.適切な難易度
経験も含めて、説明します。
一流アスリートや研究者は、独特なプロセスを持っているのかもしれませんが、一般人でも経験しているプロセスです。
1.については、研究開発において、実験の前に必ず仮説を立てます。ただ、パラメーターを計画的にふって実験する、実験計画法のようなやり方よりも、何故、この実験をやるのかを自ら問い、常に意味のある実験をし、漫然と目的のない作業のような実験を排除します。前の実験を解析し、その結果に至った理由を調べ、考察します。それをもとに、次の実験の仮説を立てます。何のためにこの実験をするのかを自覚し、実験でその仮説の答えを出すのです。このプロセスが開発をより面白くします。数学の問題を解いて、答え合わせをするような、わくわくするような感情が伴います。これは、3にもつながります。また、考え抜いて仮説を立てることで、効率よく開発を進めることにもなります。この仮説、実験そして結果は、即座のフィードバックへのプロセスです。そして、難易度も適切です。開発過程にあり、答えはないのですから簡単ではないですが、毎日のプロセスの中でこれが繰り返され、仮説への答え合わせへのプロセスである実験は、楽しみで仕方ありません。この過程で、フロー状態に至るほどのものが必ずしもありませんが、此の積み重ねで、大きなブレークスルーを必要とする時があります。その時は、ふと閃くときがあります。それが、小さいながらもフロー状態なのではないかと思っています。
4の適切な課題というのは、なるほどと納得しました。
スポーツでも、同じプロセスを使っていました。仮説というのは、イメージトレーニングをして、それを実践してみます。そして自主練により修正。これの繰り返しで、此のすべてのプロセスを楽しみ夢中になっていました。
2.成功する可能性を信じるとありますが、これは、どう解釈すればいのでしょうか?
フローを経験するときは、成功も何も考えていません。失敗するかもという不安要素を排除するという意味かもしれません。好きで夢中になっている状態なので、成功することよりも、どうやったらうまくいくかしか考えていないのではないでしょうか。もし、好きなことでも不安になった時には、下町ロケットのモデルとなった植松努さんの言葉、「”だったらこうしてみたら”で夢は叶う」と言われています。ダメかもという視点を排除して、このどうすればうまくいくかと視点が大事なのでしょう。
3.好きなこと、面白いと思えること、やりがいを感じることであれば、夢中になれるでしょう。何事にも、このモチベーションとその質はとても大事です。質とは、単に人との競争で勝つことがモチベーションになる場合、その時の手段が、正当に成果を上げることであったり、能力の向上につながるのであればいいのですが、邪道な手段をとる人を散見します。これでは、フローを経験することはないでしょう。競争に躍起になる人たちは、スポーツでも、仕事でも楽しいとは思っていないところにフローに至らない要因があるのでしょう。
オリンピック柔道で3冠を果たした野村選手の番組で、初めて手ほどきを受けた彼の祖父の勝がありました。彼は、中学校までとても弱かったようで、”勝ち負けは結果であり、二の次。好きであれば、練習もするだろうしうまくなる。楽しい、好きであることが一番大事”とおっしゃっていたようです。
4.適切な難易度というのは、難しすぎると、諦めや否定的な気持ちが出てきます。易しすぎると、退屈で、無気力になっていきます。
また、1~3迄においても言えますが、いきなり高い目標では心が折れてしまうでしょう。例えば、優勝することよりも、日々の上達に向けた課題をクリアしていくことを目標にすることで、クリアする喜びが、楽しいを重ね夢中になることに繋がります。
フロー経験談
一人前になるのに、研究者や技術者で最低5年と言われています。此の年月を経て、
成長を実感する時が来ます。経験による成長は勿論なのですが、直観も身に付いたことに気づきます。経験した研究開発では、直観は結構重要な要素ではないかと思っています。どのような仕事でも共通しているのではと思うのですが。様々な場面で、センスという言葉が使われます。特に、創造的な事柄に従事するとき、この直感が使えるかがセンスの有無と関係しているように感じています。
研究者や技術者のスランプと言われる、何をしても先に進めない、また思いつかない状態になることが多々あります。考えても考えても答えもヒントも出てこないのです。
ある時、仕事好きの技術者研究者たちと話していました。その時、この状況を打破したときに、何が起こったかという話になりました。夢で解決案を見たという人や、仕事中にふとひらめきが降りて来たという人たちがいました。フローです。
私の場合は、バイクで山に行くと、必ず走ってる途中でひらめきがやってきました。こういった時の答えは、必ずうまくいくのです。考えてひねり出した答えよりもです。
自分の経験から、フロー状態になりやすい状況を作る条件をもう一つ。
自分が、ベストパフォーマンスを出せる時間に、生活スタイルを作っていくということです。
私は、朝型でしたので、休日も、12時には就寝していました。休日の夜更かしは、休み明けのリズムを壊します。そして、早朝出勤です。誰もいない職場という環境が、一日で最も重要な時間と考えていた朝の1時間を充実したものにしました。長期休暇以はストイックにこの時間管理は守っていました。もし、夜更かしし、早朝の1時間の質が悪くなるなら、その日一日が無駄になります。また、本調子になるのは、水曜日あたりになり、2日を無駄にすることになります。それだけではなく、リズムを一定に保つ効果は、集中しやすい状況を作るうえでも重要だと感じます。まあ、不器用だからかもしれません。必ずしも、朝である必要はなく、それぞれの時間的リズムを作るのも効果を高める一つの要素ではないかと考えています。
スポーツにおいても、ド素人でも経験することはできます。地味な仕事におけるフローとは異なり、こちらは少々印象の強いもの。やはり、それこそ24時間その世界にどっぷり入っていました。とどめは、合宿で体力の限界まで追い込んだ後、このゾーンを経験しました。剣道でしたが、相手の小手が光って見えたのです。スローモーションでこちらに向かってきます。無意識に、竹刀で小手を打っていました。これが、最初で最後の経験でした。高校から始め、竹刀の振り方から教わり、やっと防具をつけて試合らしきものができるようになったのが一年生の夏休み。ゾーンを経験したのが2年生の夏休み。そして、この半年後の1月には、引退でした。短い期間でしたが、熟練度に関係なく、ゾーンは経験できるようです。大谷翔平選手は、ノートに課題などをまめに記載されているようです。見ると、毎日びっしり。小さな課題を日々クリアしていくことが、ゾーンに導き、創造的な選手になっていったのではないでしょうか。
とても好きで夢中になっていることは、努力を努力と思いませんよね。それは、目標を達成するためには、自分オリジナルな方法も見つけているものです。それを続けていくと、いづれ、正しい道に導かれる直観のような何かが訪れるということです。
それが、面白さを倍増させます。
ただ、その面白いと思えることを見つけることが、最大の難関かもしれませんが。
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